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石川県 の 社会保険労務士 丹保から No.176

 春になり、何となくですが周りの様子が落ち着かず、自分までそわそわとした時間を過ごしています。気が付けば、自宅の隣は新築の工事中で、事務所の隣の部屋は引っ越しが終わり空室になっています。この月末で一区切りの仕事もあるので、私も何か新しいことを考えてみたいと思っています。

■目次 >>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

1 <<<<< ワンポイントクイズ
       ;出向従業員の就業規則適用
2 <<<<< 今月のお知らせ  
       ;LGBTとBCPと退職金
       ;早めに見つける労務リスク診断
3 <<<<< 気になるニュース 
       ;令和3年度のキャリアアップ助成金
       ;短時間労働者に対する保険適用拡大
       ;高年齢者雇用安定法の改正
       ;新型コロナ感染予防と健康管理の強化
       ;法人設立ワンストップサービス
       ;コロナ感染症に起因する雇用への影響
       ;労働者の健康保持増進のための指針改正
       ;産業競争力強化法等改正法案
       ;クラウドサービスやテレワーク環境
4 <<<<< 広報・リーフレット;育児休業中の就労について
       ;65歳超雇用推進助成金
       ;障害者法定雇用率
5 <<<<< お役立ちアンサー

■====== 1; ワンポイントクイズ ============

Q:出向従業員の就業規則適用は?
A:  (答えは巻末をご覧下さい)

■====== 2; 今月のお知らせ ============

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LGBTとBCPと退職金をテーマに研究会

 標記の通りLGBTとBCPと退職金をテーマに下記の通りに研究会を開催することに致しました。しばらくDVD視聴による研究会が続きましたが、今回は参加人数を制限して、講師からのお話を聴講します。懇親会の開催についてはコロナ感染予防を配慮し企画いたしません。なお、コロナ感染予防のため、参加される方は当日のマスクの着用と手の消毒、体調・体温の報告をお願いします。また、当日になって体調が不良の場合など、参加を見合わせてください。
件 名 石川中央労務研究会第62回業務研究会
日 時 令和3年3月27日(土)
     午後1時30分から4時30分まで
場 所 白山市立松任公民館
    (〒924-0871 石川県白山市西新町170-1) 
テーマ 1.LGBTについて知っていますか
    2.事業継続力強化認定制度について
    3.時代とともに見直したい退職金制度
    4.その他……(参加者の情報交換)
定 員 10人程度まで 
主 催 石川中央労務研究会 tel 0761-24-1006
申 込 3月25日(木)までにお知らせ下さい

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早めに見つける労務リスク診断

 どんな仕事も人がいてできることです。労務トラブルを未然に防ぎ、従業員の力を活用して安定した経営環境を整えることが必要なのですが、企業側の労務リスク対策は十分になされていないのが現状の様です。自社の労務リスクをチェックして対応を考えて下さい。
日 時:令和3年3月30日(火) 10:30~11:30
場 所:WEB会議形式
定 員:5名様限定(先着順) 受講料無料
講 師:丹 保 敏 隆(石川県よろず支援拠点コーディネーター)
申 込:石川県よろず支援拠点 (公財)石川県産業創出支援機構
T E L:076-267-6711 メール:yorozu@isico.or.jp

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知っておきたい労働社会保険

どんな仕事も人がいてできることです。会社で人を雇うときには労災保険・雇用保険・健康保険・厚生年金などの加入手続が必要です。担当して間もない方や初めての方にも分かり易く制度の概要を解説します。
日 時:令和3年3月23日(火) 13:30~15:00
場 所:WEB会議形式
定 員:5名様限定(先着順) 受講料無料
講 師:丹保敏隆(石川県よろず支援拠点コーディネーター)
申 込:石川県よろず支援拠点 (公財)石川県産業創出支援機構
T E L:076-267-6711 メール:yorozu@isico.or.jp

■====== 3; 気になるニュース =============

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キャリアアップ助成金が令和3年度から変わります

 「キャリアアップ助成金」は、非正規雇用労働者の方の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化などの取り組みを実施した事業主に対して助成金を支給する制度です。令和3年度以降、以下のとおり、制度見直しに伴う内容変更を行っています。この内容は、令和3年4月1日以降に取り組みを実施した場合に適用されるものです。

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短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用が更に拡大されます

 2022年10月から始まる社会保険適用拡大に向けて、厚生労働省の特設サイトの開設と日本年金機構からの案内が開始されています。現在、「従業員が常時500人を超える事業所」に勤務する短時間労働者(週20時間以上・賃金月額8.8万円以上など)は、健康保険・厚生年金保険の被保険者となります。この取扱いについて、法律改正に伴い、段階的に事業所の範囲が拡大される予定になっており、事前の準備が必要ということで、その周知のため、厚生労働省が「社会保険適用拡大特設サイト」を開設しました。

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高年齢者雇用安定法の改正

 少子高齢化が急速に進展し人口が減少する中で、経済社会の活力を維持するため、働く意欲がある高年齢者がその能力を十分に発揮できるよう、高年齢者が活躍できる環境の整備を目的として、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(高年齢者雇用安定法)の一部が改正され、令和3年4月1日から施行されます。

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職場における新型コロナウイルス感染症への感染予防と健康管理の強化

 厚生労働省は、労使団体や業種別事業主団体などの経済団体に対し、職場での新型コロナウイルス感染症への感染予防と健康管理の強化などを傘下団体に周知するよう、依頼しました。併せて、新たに全国の都道府県労働局に、事業主や労働者からの相談に対応する「職場における新型コロナウイルス感染拡大防止対策相談コーナー」を設置しています。

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法人設立ワンストップサービスの対象が全ての手続に拡大

 これまで法人を設立する際には、設立届出書の提出のような複数の各種手続を行政機関毎にそれぞれ個別に行う必要がありました。「法人設立ワンストップサービス」では、マイナポータルという一つのオンラインサービスを利用して、これらの一連の手続を一度で行うことができるようになります。メリットとして、複数回の手続きが不要で、オンラインで行えるため来庁しなくても良く、24時間365日いつでも手続きできることが挙げられています。

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新型コロナウイルス感染症に起因する雇用への影響に関する情報

 厚生労働省では、新型コロナウイルス感染症が雇用に与える影響について、タイムリーに把握する観点から、都道府県労働局の聞き取り情報や公共職業安定所に寄せられた相談・報告等を基に、「雇用調整の可能性がある事業所数(※1)」と「解雇等見込み労働者数(※2)」を集計し公表しています。

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事業場における労働者の健康保持増進のための指針の改正

 労働安全衛生法において、事業者は、労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置(以下「健康保持増進措置」という。)等を継続的かつ計画的に講ずるように努めなければなりません。この健康保持増進措置に関して、厚生労働大臣は、その適切かつ有効な実施を図るため必要な指針として、「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」を公表しています。この指針について、医療保険者と連携した健康保持増進対策がより推進されるよう、所要の改正が行われました。

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産業競争力強化法等改正法案が国会へ提出

 産業競争力強化法等の一部改正法案が2月5日、国会に提出されています。改正の背景として、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、経済は戦後最大の落ち込みを記録、危機に直面していますが、他方、古い経済社会システムから脱却し、「新たな日常」への構造変化を図るチャンスであるととらえています。グリーン社会への転換やデジタル化への対応、新たな日常に向けた事業再構築、中小企業の足腰強化等を促進するための措置を盛り込んだもので、令和3年度税制改正では、産業競争力強化法の改正を前提に、
1)デジタル技術を活用した企業変革(デジタルトランスフォーメーション=DX)の実現のためのDX投資促進税制や、
2)2050カーボンニュートラルの目標に向け、温室効果ガスを削減するための企業の投資を促進する税制が創設されます。

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クラウドサービスやテレワーク環境を利用する際の個人情報の漏えいに関する注意喚起

 従業員の様々な働き方に合わせてクラウドサービスやテレワーク環境などを導入する企業が増えています。一方、これらのシステム環境を狙ったサイバー攻撃も増加しており、個人情報保護委員会には、これらのシステム環境等において発生した個人情報の漏えい事案が多数報告されています。実際に発生した事例を紹介し、個人情報取扱事業者には参考の上、自組織が利用するシステム環境の見直しの注意喚起がされています。

■====== 4; 広報・リーフレット =============

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育児休業中の就労について

 育児・介護休業法上の育児休業は、子の養育を行うために、休業期間中の労務提供義務を消滅させる制度であり、休業期間中に就労することは想定されていません。しかし、労使の話し合いにより、子の養育をする必要がない期間に限り、一時的・臨時的にその事業主の下で就労することはできます。その場合、就労が月10日(10日を超える場合は80時間)以下であれば、育児休業給付金が支給されます。

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65歳超雇用推進助成金(高年齢者無期雇用転換コース)
 50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用労働者に転換させた事業主に対して助成されます。

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障害者法定雇用率

 誰もが職業を通じた社会参加のできる「共生社会」実現の理念の下、すべての事業主には、法定雇用率以上の割合で障害者を雇用する義務があります(障害者雇用率制度)。この法定雇用率が、令和3年3月1日から以下のように変わります。

■====== 5; お役立ちアンサー =============

【出向従業員の就業規則適用】
 出向は、従業員が出向元との労働契約に基づく身分を残したまま、出向先との間にも労働契約を成立させ、出向先の指揮命令の下に労務を提供する二重の労働契約が生じます。二重の労働関係があるので、双方の就業規則の適用を受けることになりますが、それについては法律で定められているわけではありません。通常は出向元と出向先による出向契約により決定しますので、双方どちらの規定を適用するか明らかにし、労基法適用の責任の所在を明らかにしておく必要があるでしょう。
身分関係は出向元にあるわけですから、解雇(懲戒解雇・諭旨解雇を含む)、退職、定年等の身分に関することについては「出向元」、現実に労務の提供は出向先になりますので、勤務時間、休憩、休日、休暇、服務規律等の勤務条件に関わる事項については「出向先」の就業規則を適用しているのが一般的です。また、出向先における労働条件は、明確にしておく必要があります。
懲戒処分の実施について考えると、一般的に、実際に労務を提供するのは、出向先になりますので、服務規律等の勤務関係については、出向先において懲戒処分できるのが原則です。懲戒解雇や諭旨解雇等の身分関係に関しては、出向元での就業規則を適用することになります。
 年次有給休暇の勤続年数については、継続勤務していると考えられますので、勤続年数は通算します。 行政解釈では「継続勤務とは、労働契約の存続期間、すなわち在籍期間をいう。継続勤務か否かについては、勤務の実態に即し実質的に判断すべきであり、」とされ、さらに「実質的に労働関係が継続している限り勤務年数を通算する」としています。
 在籍出向は、出向元・出向先の双方において労働関係があるとされ、年次有給休暇の取扱いでは出向元における勤務期間を通算し、勤続年数に応じた日数を付与することになります。また、移籍出向いわゆる転籍の場合では、転籍先との間で新たな労働関係が成立すると解されますので、原則として転籍元会社との勤務期間は通算されません。
 転勤や配置転換が「企業内人事異動」とするならば、転籍や出向は「企業間人事異動」とされています。つまり、雇用契約を締結していた会社からの業務命令によって、その会社以外の他社に赴いて労働することをいいます。そのなかでも転籍に関しては、自社を退職し、新たに他社との間で雇用契約を締結する形態をいいます。最近では関連企業への転籍や、部門の独立法人化に伴う移籍も多くなっていますが、就業規則等での規定を条件とした業務命令により籍の異動を可能としているのは出向であって、転籍の場合には、本人の同意が必ず必要となっています。
 転籍の条件の中に、労働条件の引継ぎや退職金の継続、年次有給休暇の承継など労働契約上の権利義務関係の移行を伴う場合 には注意が必要です。

 出向・転籍は、企業において関連会社の経営・技術指導などの人事交流から余剰人員の雇用調整などいろいろな目的で実施されています。最近ではグループ会社間で経営戦略のための人事異動として行われることが多くなっています。
 「出向(在籍出向)」とは、出向元と出向先との合意により、出向元との雇用契約関係を維持したまま、出向先と出向労働者との間にも雇用契約関係を成立させ、出向先の従業員としての地位も得て、指揮命令を受けてその労務に従事することをいいます。なお、出向を一方的に命じる場合には、 労働契約(就業規則)による出向命令の包括的承諾と根拠、業務上の必要性、人選の妥当性、出向手続の妥当性が必要になります。
 「転籍(移籍出向)」とは、転籍元と転籍先との合意により、転籍元との雇用契約関係を終了(退職)させて、新たに転籍先との間に雇用契約関係を成立させることをいいます。転籍は従業員としての地位の得失に関わるものなので、出向の取扱いと異なり転籍させる場合には本人の個別同意が必要になります。

2021年3月20日