マガジン

石川県 の 社会保険労務士 丹保から No.179

 延期された東京オリンピックまでのカウントダウンにリアリティを感じるようになりました。なんで東京なのか、なんで暑い盛りなのか、なんでコロナの最中なのか、昨年末にもらったカレンダーが役に立たない不思議な夏は計画通りに近づいてきました。

■目次 >>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

1 <<<<< ワンポイントクイズ
       ;時間外労働の上限規制と36協定
2 <<<<< 今月のお知らせ  
       ;若手社員フォローアップセミナー
       ;ワークスタジオ=2021年8月1日=オープン
       ;算定基礎届と年度更新手続
3 <<<<< 気になるニュース
       ;在宅勤務に係る費用負担
       ;過重労働の重点監督
       ;職場のハラスメント
       ;インボイス制度特設サイト
       ;産業保健関係助成金
       ;ワクチン接種に関する休暇
       ;労使間の交渉等に関する実態調査
       ;電子帳簿等保存制度の見直し
       ;従業員の感染予防対策費用を負担
4 <<<<< 広報・リーフレット
       ;キャリアアップ助成金
        (賃金規定等共通化コース)
       ;働き方改革推進支援助成金
        (勤務間インターバル導入コース)
       ;働き方改革推進支援助成金
       (労働時間短縮・年休促進支援コース)
       ;働き方改革推進支援助成金
        (労働時間適正管理推進コース)
5 <<<<< お役立ちアンサー

■====== 1; ワンポイントクイズ ============

Q:時間外労働の上限規制と36協定
A:  (答えは巻末をご覧下さい)

■====== 2; 今月のお知らせ =============

若手社員フォローアップセミナー

企業の未来はヒトづくりから「若手社員フォローアップセミナー」のご案内です。若手社員を対象に企業人のあり方を確認し、組織において自律し協調して自らの役割を果たすよう、基礎的な知識とスキルの習得に重点を置いた研修会を開催します。
日時 令和3年6月24日(木)13時~17時
場所 小松商工会議所 305号室
対象 若手従業員(新入社員も受講できます)
料金 会員事業所 2,000円(資料代含む)
   一般事業所 5,000円(資料代含む)

ワークスタジオ=2021年8月1日=オープン

 リモートワークのためのワークブースと
 リモートセミナーのためのセミナースタジオを用意しました。
 自宅でテレワークのためのスペースを確保できない方や、
 社内でリモートセミナーの受講スペースを準備できない場合など、
 ワークブースとセミナースタジオをお気軽にご利用ください。

●算定基礎届と年度更新手続
件 名 石川中央労務研究会第63回業務研究会
日 時 令和3年6月19日(土)午後1時30分から4時30分まで
テーマ 算定基礎届と年度更新手続
定 員 6人程度まで 

■====== 3; 気になるニュース ==============

国税庁「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」更新を公表

テレワークに係る費用負担と給与課税の関係について、国税庁からの公表は、1 在宅勤務手当、2 在宅勤務に係る事務用品等の支給、3 業務使用部分の精算方法、4 通信費に係る業務使用部分の計算方法、5 通信費の業務使用部分の計算例、6 電気料金に係る業務使用部分の計算方法、7 レンタルオフィス、の7つでしたが、「8 在宅勤務者に対する食券の支給1(食券以外の食事の支給がない場合)」、「9 在宅勤務者に対する食券の支給2(食券以外の食事の支給がある場合)」の2つが追加されています。

令和2年度の過重労働の重点監督約75%の事業場で労働基準関係法令違反

厚生労働省から、長時間の過重労働による過労死等に関する労災請求のあった事業場や若者の「使い捨て」が疑われる事業場など労働基準関係法令の違反が疑われる事業場に対して集中的に実施された「令和2年度11月「過重労働解消キャンペーン」の重点監督の実施結果」が公表され、6,553事業場(全体の71.9%)〔前改は全体の75.3%〕で労働基準関係法令違反が認められたということです。前回よりも違反率が下がったようですが未だに高い水準にあり、厚生労働省では、今後も長時間労働の是正に向けた取組を積極的に行っていくとしています。

「職場のハラスメントに関する実態調査」の報告書を公表

厚生労働省委託事業「職場のハラスメントに関する実態調査」(調査実施者:東京海上日動リスクコンサルティング株式会社)について報告書が取りまとめられ公表されました。この調査は、平成28年度に実施した職場のパワーハラスメントに関する実態調査から4年が経過し、ハラスメントの対策に取り組む企業割合や労働者の状況も変化していると考えられることから実施されたものです。今回の調査は、全国の企業と労働者等を対象に、令和2年10月に実施したものです。この調査結果等を踏まえ、厚生労働省では引き続き職場のハラスメントの予防・解決に向けた施策を実施していくとしています。

インボイス制度特設サイトがリニューアルされました

令和5年10月1日から消費税の仕入税額控除の方式としてインボイス制度が導入されます。適格請求書(インボイス)を発行できるのは「適格請求書発行事業者」に限られ、この「適格請求書発行事業者」になるためには登録申請書を提出し登録を受ける必要があります。国税庁では消費税のインボイス制度に関する情報を掲載しているホームページ上の「インボイス制度特設サイト」について、デザインと内容を大幅にリニューアルしています。これまでのサイトの内容は、制度の概要や関係通達、Q&Aなどが中心でしたが、10月からインボイス制度の登録申請が開始されることから、新たな内容が盛り込まれています。

令和3年度産業保健関係助成金について

働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳(厚生労働省委託事業)」において、「助成制度」のページがリニューアルされています。ここで紹介されている助成金は、次のとおりです。令和3年度 産業保健関係助成金として、・「心の健康づくり計画」に関する助成金、・職場環境改善活動に関する助成金、・小規模事業場向けの助成金などがあります。その他の助成金も、厚労省のリンクが紹介されていますので、確認してみてはいかがでしょうか。

「ワクチン接種に関する休暇や労働時間の取扱い」に関するQ&Aが公表

厚生労働省では、「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」を公表しています。このQ&Aは随時更新されていますが、「ワクチン接種に関する休暇や労働時間の取扱い」に関するQ&Aが公表されています。今回追加されたのは【問20】になります。職場における感染防止対策の観点からも、労働者の方が安心して新型コロナワクチンの接種を受けられるよう、ワクチンの接種や、接種後に労働者が体調を崩した場合などに活用できる休暇制度等について、確認しておくことをお勧めします。

令和2年の労使間の交渉等に関する実態調査の結果の概況が公表されました

労使間の交渉等に関する実態調査は、労働組合を対象として、労働環境が変化する中での労働組合と使用者(又は使用者団体)の間で行われる団体交渉、労働争議及び労働協約の締結等の実態等を明らかにすることを目的とするものです。調査の範囲は全国となり、日本標準産業分類(平成25年10月改定)による16大産業を対象としています。労働組合の対象は、令和元年労使関係総合調査(労働組合基礎調査)で把握した労働組合を母集団とし、先の16大産業に属する民営事業所における労働組合員30人以上の労働組合(単位組織組合及び単一組織組合(本部組合、連合扱組合及び支部等の単位扱組合))のうちから、産業、労働組合員数規模、都道府県、労働組合の種類別に層化して無作為に抽出した約5,200労働組合です。

令和3年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しについて

経済社会のデジタル化を踏まえ、経理の電子化による生産性の向上、記帳水準の向上等に資するため、令和3年度の税制改正において、「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(平成 10 年法律第 25 号。以下「電子帳簿保存法」といいます。)」の改正等が行われ(令和4年1月1日施行)、帳簿書類を電子的に保存する際の手続等について、抜本的な見直しがなされました。電子帳簿保存法上、電磁的記録による保存は、大きく下記の3種類に区分されています。
電子帳簿等保存、スキャナ保存、電子取引

税務FAQに「企業が従業員の感染予防対策費用を負担した場合の取扱い」が追加

国税庁から、『「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」に「企業が従業員の感染予防対策費用を負担した場合の取扱い」を追加しました』という告知がありました。追加されたFAQは、次のようなものです(5の問9-5)。《企業が従業員の感染予防対策費用を負担した場合の取扱い》
1 マスク、石鹸、消毒液、消毒用ペーパー、手袋等の消耗品の購入費
2 従業員の自宅に設置する間仕切り、カーテン、椅子、机、空気清浄機等の備品の購入費
3 感染が疑われる場合のホテル等の利用料・ホテル等までの交通費等
4 PCR検査費用、室内消毒の外部への委託費用等

■====== 4; 広報・リーフレット =============

キャリアアップ助成金(賃金規定等共通化コース)

有期契約労働者等に対して、正規雇用労働者と共通の職務等に応じた賃金規定等を新たに作成し、適用した場合に受給の可能性があります!

働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)

「勤務間インターバル」とは、勤務終了後、次の勤務までに一定時間以上の「休息時間」を設けることで、働く方の生活時間や睡眠時間を確保し、健康保持や過重労働の防止を図るもので、平成31年4月から、制度の導入が努力義務化されています。このコースは勤務間インターバルの導入に取り組む中小企業事業主を支援するものです。

働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)

2020年4月1日から中小企業に時間外労働の上限規制が適用されていますが、このコースは生産性を向上させ労働時間の縮減や年次有給休暇の促進に向けた環境整備に取り組む中小企業事業主を支援するものです。

働き方改革推進支援助成金(労働時間適正管理推進コース)

令和2年4月1日から賃金台帳等の労務管理書類の保存期間が5年(当面の間は3年)に延長されています。このコースでは、生産性を向上させ労務・労働時間の適正管理の推進に向けた環境整備に取り組む中小企業事業主が支援されます。

■====== 5; お役立ちアンサー ==========

働き方改革による時間外労働の上限規制と36協定
  2018年、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(働き方改革関連法)」が成立しました。これにより、労働基準法に罰則付き時間外労働の上限規制等の改正がなされ、36協定にも大きな影響がでています。大企業の時間外労働の上限規制は2019年4月から、中小企業は2020年4月から適用されています。
(1) 罰則付き時間外労働の上限規制
 労働時間は、本来1日8時間、1週40時間を超えてはならず、超える場合でも月45時間、年360時間以内などに収めることが厚生労働大臣の告示レベルで求められていますが、特別条項に関する上限もないため、特別条項を適用すれば、時間外労働は「青天井」だと言われていました。そのため、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」において、基準告示で明示されていた時間外労働の規制の上限を明確にし、特例による青天井を年720時間に規制されることになったのです。
 時間外労働の上限を、月に100時間未満、2~6か月平均で80時間未満、特別条項の適用は現行法通り6か月以内とし、上限規制に対する違反には罰則を設けるとされています。上限規制の罰則対象となる時間外労働は、「脳・心臓疾患と労災認定」の過労死ラインを基準にされています。また、延長時間(限度時間)の単位について、現行法上は、1週間、2週間、4週間、2か月または3か月単位で定めることができますが、
法改正後は、1か月の延長時間を必ず定めなければならないとされています。これらの時間のカウントに休日労働を含むかどうか、注意が必要です。
原則である月45時間、年360時間以内、また特別条項を適用した際の年720時間未満であるかどうかは、休日労働(週1回の法定休日)は含めずカウントします。
 一方、特別条項を適用した際の、月100時間未満や2~6か月平均80時間以下については、休日労働(週1回の法定休日)を含めてカウントします。
例えば、毎週日曜日を法定休日とし、土曜日を所定休日としていた場合、土曜日に働いた分は時間外労働となり、日曜日に働いた分は休日労働となります。休日労働を含むか含まないかの管理を個々の労働者が行うには限界があるので、勤怠管理システムの導入が促進されるでしょう。なお、中小企業への月60時間を越える時間外労働に関する割増率(50%以上)(猶予措置の廃止)については、適用を当初の予定から1年延期する方針を決めました。50%の割増率のうち、25%については割増賃金の代わりに代替休暇を付与することもできます。
■時間外労働の規制
期間 一般労働者(右の欄以外) 1年単位の変形労働時間 対象となる時間
1か月    45時間      42時間      時間外労働
1年間   360時間      320時間      時間外労働
1年間   720時間      720時間      時間外労働
■時間外労働+休日労働の規制
期間 一般労働者(右の欄以外)1年単位の変形労働時間 対象となる時間
 1か月   100時間未満  100時間未満 時間外労働+休日労働
2~6か月 平均80時間以内 平均80時間以内 時間外労働+休日労働
(2) 適用除外となる事業・業務
  法改正後、適用除外の対象は下記の通りになります。
■適用除外
 ・新技術、新商品等の研究開発の業務
   (医師の面接指導、代替休暇の付与必要)
■一部適用除外
 ・工作物の建設等の事業(災害時の復旧および復興の事業に限る)
(5年間の猶予期間有)
 ・自動車の運転の業務…上限時間:960時間
(5年間の猶予期間有)
 ・医療に従事する医師(厚生労働省で定めるものに限る)
(5年間の猶予期間有)
(3)届出様式の変更
 「時間外労働の上限規制」に伴い、平成31年4月から「時間外労働・休日労働に関する協定届(36協定)」の様式が変更になります。「時間外労働・休日労働に関する協定届(36協定)」の新様式に関する主な変更点は、下記の通りです。
  1 特別条項を設ける場合は様式が2枚に
時間外労働が月45時間・年360時間に納まっている場合と、特別条項がある場合(時間外労働が月45時間を超える場合)とでは、様式が異なります。特別条項がある場合には、時間外労働が月45時間・年360時間に納まっている場合の届出様式(様式9号)に加え、特別条項にかかる部分を定めた2 枚目の様式(様式9号の2)が必要となります。
  2 チェックボックス欄の新設
「36協定で定める時間数にかかわらず、時間外労働及び休日労働を合算した時間数は、1箇月について100時間未満でなければならず、かつ2箇月から6箇月までを平均して80時間を超過しないこと。」というチェックボックス欄が設けられており、そこにチェックが入っていない場合は有効な協定届とはなりません。
  3 休日労働欄の変更
現行の様式では、所定休日と法定休日の区別がつきにくかったため、「所定休日(任意)」「労働させることができる法定休日の日数」「労働させることができる法定休日における始業及び終業の時刻」という表記に変更になります。
  4 労働者の健康及び福祉を確保するための措置
特別条項を設ける場合に、「限度時間を超えて労働させる場合における手続」と「限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康および福祉を確保するための措置」の記入が必要となります。
 【例】 医師による面接指導、勤務間インターバル等

2021年6月20日