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石川県 の 社会保険労務士 丹保から No.221

日の暮れるのが早くなり、そろそろ年末の準備が気になる時期になりました。正月の料理を作ることもなくなり、気持ちの焦りほどにはすることがないはずなのに、何か落ち着かないのは忘年会や新年会の案内が増えてきたせいかも知れません。

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■目次 >>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

1 <<<<< ワンポイントクイズ
       ;賃金支給日の変更
2 <<<<< 今月のお知らせ
       ;「お金」と「障害年金」の第76回研究会
       ;令和7年施行~改正育児介護休業法説明会
       ;令和6年社会保険労務士無料相談会
3 <<<<< 気になるニュース
       ;賃金のデジタル払い対応状況
       ;令和6年の賃金引上げ等の実態
       ;マイナ保険証の利用登録の解除
       ;立ち作業の負担軽減対策
       ;AI技術の活用による影響
       ;就活セクハラ防止義務化
       ;高年齢雇用継続給付の支給率変更
       ;改正育児・介護休業法Q&A
       ;最低賃金の引上げと企業対応
       ;新法施行前のフリーランス取引状況
       ;ストレスチェックは50人未満事業場も
4 <<<<< 広報・リーフレット
       ;両立支援等助成金(育児休業等支援コース)
       ;らくらく社員教育診断
       ;「ビジネスと人権」富山セミナー
5 <<<<< お役立ちアンサー

■====== 1; ワンポイントクイズ ===========

Q:賃金支給日を変更して遅らせることはできるか
A: (答えは巻末をご覧下さい)

■====== 2; 今月のお知らせ ============
見出しの赤い文字をクリックして関連資料をご覧ください
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●「お金の知識」と「障害年金」をテーマに第76回研究会

件 名 石川中央労務研究会第76回業務研究会
日 時 令和6年12月21日(土)午後1時30分から
場 所 白山市松任コミュニティセンター
テーマ 「お金の知識をあなたの力に」
「障害年金が支える両立の事例」
定 員 15人程度まで (先着順)
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●改正育児・介護休業法説明会

令和6年5月に育児・介護休業法及び次世代育成支援対策推進法が改正され、令和7年4月1日から段階的に施行されます。改正の概要は次の通りです。
1 子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充
2 育児休業の取得状況の公表義務の拡大や次世代育成支援対策の推進・強化
3 介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等
https://roamroom.sakura.ne.jp/sblo_files/roamroom/image/E694B9E6ADA3E882B2E58590E4BB8BE8ADB7E8AAACE6988EE4BC9A2024.pdf
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●令和6年社会保険労務士無料相談会

働く人も事業主の方も「職場でのお悩み」、「雇用についての疑問」等を労働・年金の専門家である“社労士”に相談してみませんか?
E7A4BEE58AB4E5A3ABE784A1E69699E79BB8E8AB87.pdf

■====== 3; 気になるニュース ===========
見出しの赤い文字をクリックして関連資料をご覧ください
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★企業の「賃金のデジタル払い」対応状況

8月にキャッシュレス決済サービス「PayPay」が、賃金のデジタル払いの取扱事業者(資金移動業者)第1号として厚生労働省から指定を受けました。9月にはソフトバンクグループ各社が希望する社員に対し、給与をPayPayで支払いました。そこで、帝国データバンクは、企業における賃金デジタル払いへの対応についてアンケートを実施し、調査結果を公表しました(アンケートの実施期間は2024年10月4日~10日、有効回答企業数は1,479社)。アンケートの調査結果のポイントは、以下のとおりです。
・賃金のデジタル払いの「導入に前向き」な企業は3.9%、88.8%は「導入予定はない」
・導入に前向きな理由は、「振込手数料の削減」(53.8%)、「従業員の満足度向上」(42.3%)、日払いや前払いのしやすさなどの「事務手続きの削減」(32.7%)
・導入予定がない理由は、デジタル払いと口座振込の二重運用や労使協定の改定などによる「業務負担の増加」(61.8%)、「制度やサービスに対する理解が十分でない」(45.0%)、「セキュリティ上のリスクを懸念」(43.3%)
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★令和6年の賃金引上げ等の実態

厚生労働省は令和6年「賃金引上げ等の実態に関する調査」の結果を公表しました。令和6年中における賃金の改定の実施状況(9~12月予定を含む)をみると、「1人平均賃金を引き上げた・引き上げる」企業の割合は91.2%(前年89.1%)、「1人平均賃金を引き下げた・引き下げる」は0.1%(同0.2%)、「賃金の改定を実施しない」は2.3%(同5.4%)、「未定」は6.4%(同5.3%)となっています。
企業規模別にみると、すべての規模で「1人平均賃金を引き上げた・引き上げる」企業の割合が9割を超えており、いずれも前年の割合を上回っています。
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★マイナ保険証の利用登録の解除

現行の健康保険証の廃止とマイナ保険証への一本化に伴い、マイナンバーカードを取得していない方やマイナンバーカードを健康保険証として利用する登録をしていない方などには、保険者から資格確認書が交付され、それを医療機関に提示することにより、これまでと同様に保険医療が受けられます。そして、いったんマイナンバーカードに健康保険証の情報をひも付けた後で、情報漏洩が不安などの理由により、その登録を解除した方にも資格確認書が交付されます。
当初、マイナ保険証の登録は原則として解除できないことになっていましたが、利用登録自体が任意で行われることなどを踏まえ、登録後の解除を認めることに方針変更しました。マイナ保険証の利用登録解除の全体の流れは、次のとおりです。
(1) 加入者からの利用登録の解除申請の受付(加入者)
(2) 解除申請者に対する資格確認書の交付(保険者)
(3) 中間サーバーへの解除申請者の情報の登録(保険者)
(4) 解除申請者の解除状況の確認(保険者)
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★立ち作業の負担軽減対策

工場のライン作業や、工事現場における交通誘導作業、スーパーの会計作業など様々な場面で見られる「立ち作業」は、業務に集中しやすい、とっさに動きやすいといったメリットがある一方で、長時間持続的に行われると足腰等への負担が大きくなり、作業効率も落ちるといったデメリットもあります。労働安全衛生規則615条では、就業中にしばしば座ることのできる機会のあるときには椅子の備え付けを事業者に義務付けています。
「(立業のためのいす)第615条
事業者は、持続的立業に従事する労働者が就業中しばしばすわることのできる機会のあるときは、当該労働者が利用することのできるいすを備えなければならい。」必ずしも座って作業をすることを求めているものではありませんが、立ち作業にともなう従業員の足腰の負担を軽減するためには、作業時間の短縮やこまめな休憩の取得等を行うことや、作業中に座ることができるイスを設置するなどの対策が考えられます。

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★職場におけるAI技術の活用による影響 日本は特殊?

独立行政法人労働政策研究・研修機構が行った「職場におけるAI技術の活用と従業員への影響」という調査があります。この調査では、AI技術の活用が、従業員のタスク、スキル、雇用、賃金、労使関係のあり方などにもたらしている影響を、日本とOECD加盟国との比較で指摘しており、これからの労務管理を考えるうえで参考になります。AI技術が従業員に対してもたらす影響は、調査対象の多くの国で共通する部分もありますが、日本と他国との差異も指摘されています。
AI技術が特定のタスクを完全もしくは部分的に自動化する場合、従業員に低スキルのタスクが配分されることにより、他国の事例ではスキルの低下がみられたが、日本の事例ではスキルの低下はみられなかったとのことです。また、他国の事例では、従業員が担うタスクや必要とされるスキルの向上による賃金の増加、あるいはスキルが低下したことによって、一部の事例で賃金の低下が生じているが、日本の事例では賃金の増加・低下はみられないという差異もあったとのことです。
これらの差異には、日本のいわゆるメンバーシップ雇用が大きく影響しているようです。
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★「就活セクハラ」防止義務化に向けた動き

「就活セクハラ」とは、従業員間ではなく、就職活動中の学生に対して採用担当者等により行われるセクシャル・ハラスメントを指し、問題視されています。これまで、大企業を中心として、性被害などの深刻な事案も発生しており、自主的な指針を作る企業もみられます。
厚生労働省の「職場のハラスメントに関する実態調査」(令和5年度)によると、「インターンシップ中に就活等セクハラを一度以上受けた」と回答した人の割合は30.1%(「インターンシップ以外の就職活動」は31.9%)で、セクハラの内容としては「性的な冗談やからかい」「食事やデートへの執拗な誘い」「不必要な身体への接触」といったものが挙げられました。就活セクハラは、現時点では企業に防止義務はないとはいえ、倫理的にあってはならないことです。
また、万が一起こってしまった際は、企業のイメージ棄損などにつながります。企業の責務を果たすと同時に、人材の安定した確保を行っていくためにも、就活生や応募者へのセクハラ防止に努めていくことが重要です。
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★令和7年4月から高年齢雇用継続給付の支給率変更

厚生労働省は、「雇用保険法等の一部を改正する法律」(令和2年法律第14号)の施行に伴う、令和7年4月1日からの高年齢雇用継続給付の支給率の変更について、リーフレット等を公開しました。高年齢雇用継続給付は、高年齢者の就業意欲を維持、喚起し、65歳までの雇用の継続を援助、促進することを目的とし、60歳到達等時点に比べて賃金が75%未満に低下した状態で働き続ける60歳以上65歳未満の一定の雇用保険一般被保険者に給付金を支給する制度です。
60歳に達した日(その日時点で被保険者であった期間が5年以上ない方はその期間が5年を満たすこととなった日)が令和7年4月1日以降の方が、支給率変更の対象となります。変更される支給率は、現行が60歳到達等時点に比べて61%以下のとき各月に支払われた賃金額の15%支給のところ、変更後は60歳到達等時点に比べて64%以下のとき各月に支払われた賃金額の10%支給となり、60歳到達等時点の75%以上で不支給は変わりません。
リーフレットには、支給率の早見表なども掲載されています。高年齢雇用継続給付を受給予定の方、申請予定の事業主の方は、確認しておくことが大事です。
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★改正育児・介護休業法Q&Aが公表されました

厚生労働省が「令和6年改正育児・介護休業法に関するQ&A(令和6年11月1日時点)」を公表しました。1.全体、2.子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充、3.育児休業等の取得状況の公表義務の拡大、4.介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等の4項目について、計62の問を収録しています。なかでも、多くの方が悩んでいると考えられる「子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充」については、適切な対応をするための助けとなる回答が多く示されています。
例えば、『Q2-7:…既に事業主が独自に当該措置で2つ以上の制度を導入している場合には、特段、新たな対応は求められないという理解でよいですか』という問には、既に社内で導入している制度がある場合に当該制度を「柔軟な働き方を実現するための措置」として選択して講ずることは可能としつつ、職場のニーズを把握するため、過半数労働組合等から意見を聴取する必要があるなど、様々な問への回答が示されています。
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★最低賃金の引上げと企業対応

今年も10月から次々と各都道府県にて新しい最低賃金が適用されています。今年の全国加重平均額は1,055円となり、前年から51円引き上げられ過去最大の引上げ幅(引上げ率5.1%)となっています。11月1日に新しい最低賃金が発効した徳島県は、全国平均を大きく上回る84円の引上げ(引上げ率9.4%)となったことが大きく報じられるなど、最低賃金引上げの企業への影響の大きさを物語るものとなっています。
独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)は、厚生労働省からの要請に基づき、地域別最低賃金の引上げが中小企業・小規模事業者に及ぼす影響や対応状況についての調査を2021年度・2022年度と連続で実施しています。
具体的な取組内容(複数回答)は、「賃金の引上げ(正社員)」が53.1%と最も多く、次いで「製品・サービスの価格・料金の引上げ」(45.3%)や「人件費以外の諸経費のコスト削減」(43.7%)、「人員配置や作業方法の改善による業務効率化」(36.1%)、「賃金の引上げ(非正社員)」(34.9%)、「給与体系の見直し」(28.1%)、「労働時間の短縮」(24.4%)などが挙がっています。最低賃金の引上げは今後も続いていくことが予想されます。自社における影響を踏まえて、引き続き対応を検討していく必要があります。
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★新法施行前のフリーランス取引状況

フリーランスとして働く人々が安心して働ける環境を整備する目的で、11月1日に特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(以下フリーランス法)が施行されました。
これを踏まえ、公正取引委員会と厚生労働省は共同で、新法施行前のフリーランス取引の実態を把握するために、様々な業界のフリーランス労働者と委託者を対象に、取引条件や契約内容、報酬の支払い状況などの実態調査を行いました。調査結果を見ると、法施行前のフリーランスの労働環境は生活が不安定になるリスクが多く不満が募る状態となっていたことがわかります。新法の施行により、これらの問題が改善されることが期待されます。
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★ストレスチェックの実施義務が50人未満事業場にも拡大へ

労働政策審議会安全衛生分科会に、50人未満事業場へのストレスチェック実施を義務化する案が示され、概ね了承されました。今後は厚生労働省が報告書をまとめ、来年の通常国会に労働安全衛生法の改正法案が提出される見通しとなっています。精神障害の労災支給決定件数が、ストレスチェック制度の創設された2014年に比べ約2倍に増えている一方、50人未満事業場ではメンタルヘルス対策に取り組む事業場の割合が低い(令和5年労働安全衛生調査による)ことから、実施義務の範囲が拡大されることとなりました。

■====== 4; 広報・リーフレット ===========
見出しの赤い文字をクリックして関連資料をご覧ください
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◆両立支援等助成金(育児休業等支援コース)

労働者に育児休業を取得させ、職場復帰させた中小企業に対して両立支援等助成金(育児休業等支援コース)が給付されます。
Microsoft PowerPoint – jyoseikin_2410
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◆らくらく社員教育診断

「企業は人なり」と言われる通り、社員がそのスキルを向上させ能力を発揮することが期待されています。社員教育についてのアンケートに答えて頂くと対応に向けたレポートをお送りします。
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◆「ビジネスと人権」セミナー

成長し続ける企業に求められる「ビジネスと人権」に精通したBHR推進社労士が人権デューディリジェンスについてご説明します。
日時 令和6年12月4日(水)14:00~
会場 富山商工会議所ビル9階

■====== 5; お役立ちアンサー ===========

賃金支給日の変更
就業規則等を変更することによって賃金支給日の変更は可能です。
労基法第24条第2 項で「賃金は、毎月1 回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので、厚生労働省令で定める賃金(第89条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。」と「毎月払の原則」が定められています。毎月払の原則についての「毎月」とは暦月をいいますから、毎月1日から末日までの間に1 回、日を決めて賃金を支払っておけばよいことになります。
もし、毎月25日払いを末日払いに変更するのなら同一月なので毎月払の原則については問題ありません。行政解釈では「賃金の支払日は毎月払の原則又は労働協約に反しない限り、労働協約又は就業規則によって自由に定め、又は変更し得るものですから、使用者が事前に労基法第90条の手続にしたがって就業規則を変更する限り支払期日が変更されても本条違反とならない。」とされていますので、賃金支給日を変更するにあたり、就業規則を変更しておけば問題ないでしょう。
ただし、賃金支給日の変更月には支給日が5日間だけ遅くなるわけですから、賞与支給月に変更するなど配慮して、従業員に対し十分説明して変更するのが良いでしょう。