スモールトーク

お上の給付金

景気は北京オリンピックまでという話がずっと前からあったのに、そんな気配など消えてしまったかのような雰囲気の中にいました。経済環境の大規模な変化と急激な景気の落ち込みに対応した特別減税の構想が発表され、まず考えたのは給料計算業務に無理がかかるのではないかということでした。給料計算や社会保険料算定などのシステム変更に費やす時間と経費は、あまり生産的と受け止められないだけに大きな負担を感じてしまいます。そのうえ、年末に給料計算をやり直すようなことになっては大変なことだと心配になったのです。それが給付金として一律支給されることで、事業所サイドとしては余計なソフト更新や再計算は必要なくなりました。その一方では、給付事務を担当する自治体の負担はかなり大きい様子で、職員の給料予算の増額だけでなく臨時職員の増員まで予定しているところもあるとの報道もありました。
 このことは、事業所に於ける日常業務の中で税や社会保険に関してどれだけ大きな負担があるかということにもなります。実際のところ、給与からの税金や保険料の控除だけで済めばたかの知れた事務負担といえなくもないのですが、従業員一人一人の本人はもちろん家族について被扶養事実の確認やそれに伴う収入や障害や住所、そして年末調整や住宅取得控除から更にはその是正業務まで含めると給料計算以上の手間がかかり「正」社員の雇用を抑制する機能を果たしているのではないかと思いたくなります。この作業をアウトソーシングすることで事務効率はよくなりますが、それに応じたコストが発生するのは明確です。
 さて、この給付金と引き換えに消費税率引き上げによる増税というのがグランドデザインのようです。うまくやると消費税の戻し税の事前準備になるというのは考え過ぎかもしれませんが…。食料品や住居にかかる消費税を個別に減額したり免除したりすることと比べれば、定額制か申告制かは別としても、戻し税とした方が事業者にとっては分かり易く手間もかからないと考えられます。ただ、サラリーマンにとっては、所得税や住民税そして社会保険料は勤務先で面倒を見てもらいながら消費税だけは本人の手続きを要するというのでは違和感があるかも知れません。それなら、年末調整も止めてしまい全国民が確定申告すればいい、と思うのが面倒臭がり屋の発想です。確定申告に対応するには役所の人手が足りないならワークシェアリングの考えを採用して、失業者をこの部門に吸収することも可能ではないでしょうか。ただ、確定申告することでサラリーマンの税に関する感度が過敏になることは歓迎されないと予想されます。
 ところで、住宅取得控除ですが、私の場合は消費税の戻し税方式が採用されていたら随分と助かっただろうと思うことがあります。それは、いくら限度額を引き上げても払った税額以上に戻るわけではなく、所得税の控除は所得の小さい人つまり税額の低い人にはあまり効果がないからです。2000万円の住宅なら消費税率5%で100万円の消費税(もし10%なら200万円)ですが、所得税を全て取り戻すことができるのはそれなりに高額所得者で、若い世代で住宅価格の1%もの所得税を負担している人は多くはないようです。これは、ローンを組んで何年も返済し続けているのに、消費税相当分の残高がいつまでも減らなかった者の実感です。

2008年11月20日