スモールトーク

ひと一人は大切なり

ここ何年か、増員補充などで従業員を募集しても、期待とかけ離れた人が応募してくるなど、採用求人が思うように進まず課題を抱える企業が多くなりました。数年前までは、人を減らし給料を下げて人件費を抑えることが企業として存続するための条件であるかのように説く金融機関やコンサルタントが多くいたことを思うと、その結果が今になって顕われたかのような気もします。今となっては仕方のないことだったかも知れませんが、幾らでも人の補充が効くことを前提に、企業は必要な時に必要な能力を持つ人を必要なだけ充当することができて、そのために必要な能力は企業ではなく求職者自らの責任で習得することが当然という考えです。いわゆる非正規とされる、臨時・パート・派遣など、今でも簡単に採用できるつもりでいる事業主の方がまだいますが、事務職以外では自社に相応しい人を見つけるのに随分と苦労することが多いようです。もともとの古典的な意味での派遣社員は自己啓発の意欲も旺盛で非常にレベルが高く落ち着くところに落ち着いているはずですし、臨時で有期雇用の更新を繰り返していたような人達は雇用の不安定さと将来への不安感から賃金水準の高さよりも雇用の安定とキャリアの継続を望んだように見えます。パートは自らはフルタイム勤務を望みながら短時間勤務に妥協している人がいる一方で、ライフステージの中で時間が必要な時期の人も確かに存在しており、背景まで考えると複雑になります。パートは期待される年代の人達が思い通りには集まらないようです。国の施策から育児休業や短時間勤務を利用する人が増えてきて、当然ながら、この十年ほどのうちに出産や育児を理由に離職する女性の数が減り、パートの労働力市場に出てくる人が少なくなってきたと感じています。こんな中で、上手な採用も勿論ですが、いま在る人の成長と継続を確かなものにすることが大切になってきました。仕事をするのは人であり、人を大切にして、人とともに成長する企業風土を培うことは、時間を掛けてでも取り組む価値があると認める企業が増えてきました。人づくりに関わる者として大きな課題が与えられたと思っています。

2017年10月26日