スモールトーク

ひと夏の潮ぬき



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 今年の夏は船を降りることに決めました。…と言っても去年からほとんど海に出ることがなくなってしまったので、船の手入れを諦めたということになるのかも知れません。かなりの船齢を経て中古になってから譲り受けたシーホッパーはメインブロックのスプリングコイルが折れてしまい、修理もしないままに年を越してこの春も艇庫から出して船台に載せてもらいながらそのまま2ヶ月が経っています。コンディションのいい年であっても毎週のように艇庫に通って、実際に海上に出ることができるのは年に何回かしかありません。自分の技術レベルでは、少し波が高かったり雨が降ったりするとビーチスタートで艇を出すことができませんし、風が吹けばパワーを受けて船のスピードが出て面白いはずが逆にコントロールが難しく危険ですし、風が落ちてしまうと風をつかめなくなって動きがとれず岸まで戻れなくなりそうでこれも困ります。それでも、海の近くに生まれ育ったせいか、沖にまで出ることはなくても波を眺めながら風に吹かれているだけで心が洗われるような気持ちになります。幾ら下手でも続けているのはそのせいだと思います。嬉しいときも辛いときも何もないときも、子供の頃から、浜辺を歩いて気持ちを落ち着かせ考えをまとめることができました。自分で海に出るのは一つの夢のようなものでした。乗り始めたのはセーリングクルーザーがきっかけで、体育会系の競技からでなくヨットスクールの体験試乗会から入りました。レースでは最後尾に着いていくのが精一杯で海上を漂っている有様ですが、体育会系が分からなくてもオフには何とか仲間に入れて貰えたのは有り難いことです。孤立無援の海上から陸の連帯が生まれると考えると、船を降りてから飲み会だけに参加するのは失礼かと思いながら、再び海に出る日があることを忘れずにこのシーズンを過ごします。今年の夏、海に出ないのは船のせいだけで、ウエットスーツがきつくなったことは理由にしたくありません。

2012年5月31日