スモールトーク
ひやひやのソフト更新

個人で事業を営む者にとって、これから一月ほどは税金の確定申告で時間を使う時期になります。仕事も家事も入り混じったレシートを整理したり、請求書や領収証を台紙に張り付けたりパンチして綴ったり、普段の仕事とは違った紙屑の分別みたいなことで悩むことの多いのが、これまでの2月3月の休日でした。ところが、ここ何年かのうちに行政の電子化の流れに乗って確定申告も電子化が進められ、紙の申告書を使わずにパソコンやスマホからeTaxとかeLTAXとかを利用する人が増えているようです。電子申告すると控除額が上乗せになるという話もあり、昨年は久し振りにカードリーダーを引っ張り出して、年号が平成で表示される会計ソフトを騙して使いながらパソコンで申告してみました。今年は基本的にデータが残っているので楽に申告できるつもりですが、いつの間にか基礎控除が10万円拡大されていると思ったら青色申告控除も給与所得控除も公的年金控除もそれぞれ10万円ずつ圧縮減額されていて、単純に差引20万円分が課税対象額として増えるのはこれに税率を乗じた分だけ所得税と住民税が多くなっていることが分かりました。うまい仕組みです。そしてこれからは消費税のインボイスです。顧問先のことを考えるとインボイスのコードも必要だと考えられます。おそらく、収入の増減に関わらず、この先はずっと消費税を払い続けることになります。うまい仕組みです。さすがに消費税の計算も必要ということになると、旧い会計ソフトをいつまでも使い続けるわけにはいきません。バージョンアップするたびに高額化するので更新を敬遠していた会計ソフトですが、新しく慣れないソフトに乗り換えるのも不安が大きく、従来と同じ会社の製品で消費税率が更新されて令和の年号が表示される会計ソフトを購入しダウンロードすることにしました。所得税申告もインボイス登録もソフト更新も、自ら進んで申し込んでやっていることでも、ほとんど選択肢と言えるような選択肢は残されておらず、囲い込まれた折の中から別の折に入るのか入らないのかを決めているだけのようです。社会環境の変化に対応して自らをこれからの社会にコミットするには、そのための主体的な態度表明が求められており、それなりの費用負担が当然に求められることだと考えると、これは年ごとに新たな生命を求める宗教行事のようにみえてきます。個人の管理には住基カードといわれたものが廃れてマイナンバーカードに更新され、行政ではe-GovとかgBizとかを窓口に電子政府を推進するようです。私どもの業務自体がこのような行政の窓口と密接に絡むものであり、云わば、その手先としての役割を果たすべき立場にもあることから、事務所の日常が行政の窓口として深く取り込まれることを認識していく必要があると考えています。
2023年2月4日