スモールトーク

カヌーの聖地に新生物

 いつもより随分と早く散った桜に葉が繁り始め、お天気の割には人が少なく感じる木場潟の周りを歩いてみました。遠く金沢方向から続くクレーンの列が潟の端をかすめて、福井の方に向かう北陸新幹線の工事が進んでいます。晴れた日には車窓から木場潟越しに白山を眺めることのできる絶好のビューポイントになりそうです。工事が完成して潟の水辺から見上げると冬の西風を遮る防風壁のような高架になります。潟の周辺は地盤がゆるく、環境整備工事に際してはいくら杭を打ち込んでも地盤に届かず、潟の周りに遊歩道が浮かんでいる状態だと聞いています。そんなところに大規模な橋脚工事が続くのを見ると土木技術の進歩を感じます。水質の悪化が甚だしい木場潟の環境を整備してちょん髷を結った映画を撮れるようにする考えもあったそうですが、カヌーの聖地を目指して競技施設が設けられ更に新幹線が屏風のような高架の上を通ることになると、時代劇のロケ地としては難しくなってしまいました。
 とはいえ、周囲6km余り時間にして1時間半ほどの周回遊歩道は軽く体を動かすには都合がよく、少し時間が空いたときに気楽に一回りすることができて、往復コースと比べて飽きの来ない風景の中を歩くことができます。先日は風が強く水面に皺が入ったみたいに小さな波がせわしなく寄せていましたが、向かい風でスタートして疲れてから風を背負って歩くと、潟の向こうの水面から渡る風は涼しくもう少し歩こうかという気分になりました。新幹線工事を覘き込んだりまだ伸びない葦の間で休む小鴨を眺めたりしていると、岸辺の草の上で十数匹の亀が首を伸ばして甲羅干しをしていました。子供の頃から馴染みのある亀とはどこかスマートで引き締まった印象のアカミミガメのようです。木場潟の水は外来の亀にとって居心地のいい環境なのか、水がきれいになる前に居場所を確保しているかに見えます。

2018年5月6日