スモールトーク

ナホトカ

ナホトカ重油流出事故による海岸汚染から10年になります。ずっと海の傍で暮らす者として、この時に「何もしなかった」ことは、年が経つ程に大きな失敗だったと覚りました。あのままでは自分を失いかけていたようです。海に近く、地名も“浜”、学校名も“浜”、砂の上で育ちました。うれしい時も困ったときも、何でもない時にも、訳もなくぼんやりと浜に出ると気持が鎮まるのです。余りに当り前のことでした。
 阪神地震で既にボランティア活動は社会的には受容されていたのですが、当時、職場の管理と別次元で活動する自主的なボランティアを反体制活動家のように扱う雰囲気の中で、自分にできる筈の事さえ何もしないままに春を迎えてしまいました。私よりずっと忙しい地元企業の社長さん達が誇りを持って参加されていたことも後になって聞きました。後ろめたさを抱えながら、ボランティア基地となった海洋センターのセイリングスクールで「海は機嫌のいい時に少しだけ人と遊んでくれる」と言われ、夏の海に出る機会もできました。浜風の通る玄関脇にはハマナスとクグミの木も植えてみました。

2007年1月4日