スモールトーク

フィルム式写真機

銀塩フィルムやフィルム式写真機の製造中止の発表が相次いでいます。デジタルカメラが普及したためで、自分でもここ一年ほどはパソコンの画面と映像添付メールの送受信で済ませてしまい、写真屋さんへプリントに出さずフィルムも使うことがありません。でも、森山大道や中平卓馬のアレ・ブレ写真で目覚めた者にとっては、ザラザラとした粒子の銀塩写真にはこのまま消えて欲しくないという思いがあります。時間をおいて記憶を成長させるようなスライド写真にも残っていて欲しいという思いがあります。
 父の形見のようになってしまったキャノンのF1は、手入れもしないまま二十数年が経ちますが、このフォーカルプレーン式シャッターは今でも金属音を残して作動します。このずっしりとした鉄亜鈴のような写真機を手にすると、露出計の電池も切れシャッタースピードに正確さは期待できないので、高感度のモノクロフィルムをセットして暫らく何処かへ旅に出たくなるような衝動を覚えます。

2006年10月1日