スモールトーク
労働紛争解決手続
ここ1年ほどの間に労使紛争といわれる事件に幾つか係わる機会がありました。社会保険労務士ということからすると当然の業務なのかもしれませんが、これまでなら相談で留まっていたのが“あっせん”や“審判”の紛争解決手続にまで進むことが多くなったと受け止めています。これは、経済情勢を背景に紛争自体が増加したことが大きな理由に挙げられますが、紛争解決の手段の一つとして“あっせん”などADRの利用が次第に受容されつつあるようにも感じられます。当事者同士の主張が咬み合わないどころか話し合いの場すら設定できなかったり、お互いが顔を合わせると却って気持ちが昂ぶって話がこじれそうになったり、こんな時には誰か第三者が間で仲裁に入ってまとめた方が無理のない解決に落ち着くことがあります。これを制度化したのが“あっせん”などADRであり、複雑で時間がかかる裁判手続を簡略化短時間化にしたのが“審判”です。労使紛争は発生する前に解決するのが理想であり、そのためには日常の労務管理が大切なことはいうまでもありません。ただ、問題が起きてしまった時には、お互いが心を持った人間であり、感情に走らず落ち着いた対応を求められるところです。時間をかけてでも対立している事項を明確にして主張を通そうとするなら裁判が相応しいのでしょうが、妥協できる部分を探し出して紛争に費やする時間とお金とエネルギーを少しでも省こうとするなら“あっせん”を試みるという選択肢が浮かんできます。ここで不調となって“労働審判”に移ることも無駄ではないようです。数年前、県社労士会の会長から特定社会保険労務士となるための特別研修を受講するよう勧められ、その理由も充分に理解することなく試験を受けて特定社会保険労務士としての付記登録も終えることができました。会から個別労働紛争解決センターあっせん委員の委嘱を受け、今頃になって、ようやくそのことの重大さに気がつきました。
2011年9月1日