スモールトーク
壁面を背にして日本の未来づくり
社会保険労務士制度創設50周年記念式典に出席してきました。会場は東京フォーラム、中央部最上階、最上段最後部、本当に背後は壁面でした。地方の社会保険労務士会の更に周辺地域の小さな支部に属し、最末端最底辺で業務に携わる私たち小さな事務所の者にも、式典出席の呼びかけがあったことがよく分ります。ステージの床面は勿論のことオーケストラボックスの底まで覗き込む位置から、天皇皇后両陛下を膝の先に望み、全国から集まった多くの社会保険労務士会幹部の熱気を受け止めることができました。「人を大切にする企業」「人を大切にする社会」の実現に向けて、と題されて催された式典の後半は“日本の未来づくりと社労士の役割”をテーマにしたシンポジウムが行われ、各方面の有識者の皆さんから様々の視点から私たちへの期待や激励がありました。その中で私にとっても一つの課題と考えられるのは、「人が夢中になって仕事を覚える時間」をどうやって作り出すかということでした。海外で仕事を探す人や留学を志す人が減少していることとも関係しているのかも知れません。若い時期にしかできないこと、時機を逸しては取り返せないこと、大切なことを見逃したまま時間が過ぎ去るのを知りながら、前に踏み出すことを考えずに今ここに留まるという選択が、ちょっと不思議なことに思います。終身雇用終焉の不安なのか、非正規雇用への反発なのか、貧困化の拡大深化なのか、中間層崩壊の反映なのか、どれも当ってはいないようです。企業が簡単に解決できる課題ではありませんが、仕事を通して考えるなら、仕事をするのはヒトであり、ヒトを大切にする企業は仕事を大切にする企業であり、仕事を大切にする企業で働くヒトは仕事をするヒトであり、ヒトを大切にする企業には仕事をするヒトがいるということになります。私たち社会保険労務士にとっては、安心して仕事をすることができる企業づくり、安心して仕事を覚えることのできる企業づくりが課題として示されたのだと考えています。「人一人は大切なり」の言葉を心に刻み、50年の歴史を踏まえながら、「仕事をするのはヒト」の思いを新たに、新しい年の始めを迎えています。
2018年12月30日