スモールトーク
大人のえほんの読み方

小松には図書館がいくつかあって、メインとなる芦城公園内の図書館は建て替えが考えられており、新しく図書館というにとどまらず博物館と公会堂の機能を混ぜ込んだものになるようです。石川県では県立図書館が話題になりましたが、今の立地だと県立とはまた違うロケーションで公園や美術館や市役所までが近い距離にまとまり、大きなコンサート以外は市役所前で収まるこじんまりと奥まった雰囲気になりそうです。実はこのエリアには既にこじんまり潜む「えほん館」(小松市立空とこども絵本館)というのが有ります。古い銀行や警察署の建物を20年ほど前にリノベーションした施設で、不思議と居心地よく落ち着いた気分を醸す場所になっています。ここの別館二階の小さな洋室は、十数年前には研究会に貸してもらうことが出来たのに、暫く物置にするとして借りられなくなりました。これが、公会堂がなくなったせいなのか、この頃また借りることができることになり、先日の事務所の研究会場として使わせてもらうことにしました。実は、古い銀行の建物という珍しさも加わってか、普段の研究会より参加者が多くて収まり切らず、チェンバロが据え置かれた一階ホール(銀行時代の執務室)で開催するという私達にとっては少し贅沢なことになったのです。高い天井の白い壁をスクリーン代わりにプロジェクターからパワーポイントの画像を投影して、いかにもインスタ映えしそうな設定の中で絵本館の二木館長さんから話を聞かせてもらいました。大人の絵本がテーマで、絵本は心を育てるものであり、子どもの時に読んでもらう絵本、子どもに読んでやる絵本、高齢者になってからもう一度読む絵本、があって人生に3回絵本を読むといいという柳田邦男氏の言葉を紹介されました。大人だからこそ味わえる絵本の楽しみがあるということです。松居直氏は大人なって絵本を読むと過去には味わえなかった新鮮な読書体験ができるとして、「言葉」は「人と人をつなぐ力」があると語り、人と人が一緒にいるところには「言葉の世界がある」と言っているそうです。そして、「子どもに絵本を読ませる」のではなく「自分の声で読んでやる」ことが大切だとして、これからは年を重ねた方が絵本を読み、自分なりにどういう風に生きてきたか「生きる力」を絵本の中から汲み取って欲しいという言葉を残しています。この松居直氏は絵本出版界の名編集者であり、金沢にも店舗があった福音館の社長でもあり、多くの絵本作家を発掘し支援した人で、小松えほん館の顧問として活動の支えとなっていた人です。建物の大きさではなく、蔵書の数の多さでもなく、読んで聞かせる人のいる図書館がここに有るのが面白いところです。つげ義春さんの訃報があって、ほんやら洞とかもっきり屋とか現実空間との境界も怪しく、絵と言葉が混淆とした不思議な世界を想い出しながら気づいたのは、声に出して読んだり聞かせたりしたことのない漫画劇画と絵本の違いもみえてきます。
