スモールトーク

寺山修司記念館

三沢市にある寺山修司記念館のタイトルでは「マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや」となっています。しかし、私が憶えていたのは「マッチ擦る海峡に霧深し見捨つる程の祖国はありや」、こんな歌だったのです。“海峡”の部分は、大間崎から乗ったフェリーの風景が重なってしまい間違えていたようです。ただ、この歌の「みすつる」が“見捨つる”なのか“身捨つる”なのか、祖国のために身を捨てることを想う寺山修司のイメージが成り立ちません。身を捨てるに値する祖国を求めたのか、それとも、見捨てようにも心の内には捨てるべき祖国がないことに気づいたのでしょうか。
私が子供の頃はまだ、特攻隊で出陣せずに終わったという先生や台湾でタカサゴ族(先住民)を教化したという経歴の先生達が残っていて、“死んだつもりで新しい国をつくる”と話されたことを覚えています。“新しい国”の平和憲法しか知らない私にとって、憲法の改正とは祖国が消えてしまうことのように感じています。微かな思いではあっても捨てようのない自分の国があることは確かです。

2006年10月1日