スモールトーク
柿の気まぐれ

年ごとに果物が美味しくなっていると思います。梨や葡萄、蜜柑や林檎、桃に無花果、どれも改良が進んで大きく甘く綺麗になりました。子供の頃、松林の陰に茂るグミやクワの小さな実にも甘さを覚えたのがウソのようです。味に応じて値段も驚くほど高くなりました。一房で1万円を超えるルビーロマンなど、これもまたウソみたいです。趣味で葡萄など果物を作る人も多く、キウイや苺は家庭菜園でできるようです。イモ苗まで枯らしてしまう私には苺でも栽培は難しいのですが、今年の柿は何の手入れもせずに沢山の実をつけてくれました。実家の隅に甘柿と渋柿の木が一本ずつ、どちらの木も父親がずっと昔に植えたものか、もしかしたらもっと古いのか、甘柿は春日神社の秋祭りの頃までがパリッとした歯触りで、お神酒の入った獅子舞には丁度いい酔い冷ましになっていました。渋柿はもう少し寒くなると母親が皮をむいて軒下に吊るして干し柿になる筈のところ、陽射しが強いのか雨風が当たるのか、期待とは少し違う固めのドライフルーツに出来上がることが多かった記憶があります。急ぎ過ぎると渋みが残っていて、なかなか食べ頃の仕上がりには当たりませんでした。長い時間を経るなか、古くからの柿の木は工夫もなく改良もなく、それでも今年は甘柿も渋柿も豊作です。残念なのは好んで柿を食べる人が少ないことで、何となく古臭く見えて高級感が無く、独特の熟柿臭さが嫌われたり、皮を剝く手間と種を出す手間が面倒がられたり、沢山の柿を落としても捌ききれなくなってしまいます。今年は母親のお陰で何とか行き先が決まりました。イモ掘りをしながら母は柿の実のことをしきりに気にしていたそうで、お世話になっている介護施設でリハビリを兼ねた皮剥きと吊り紐結びに渋柿の全部を引き取ってもらうことになり、甘柿も施設で少し食べてもらうことができました。何年か前までは、渋柿の葉を柿の葉寿司に使うといいとかで、葉っぱも想定外の人気だったのですが、今年は需要がなくなりました。実は甘柿より渋柿が沢山植えられていて、これは、ずっと昔に浜で地引網を引いていた時代が有って、その頃は柿渋が漁網の防腐剤として使われていたのだと聞いたことがあります。渋柿の葉にも抗菌効果があると思えば柿の葉寿司が日持ちする訳が分かります。柿を食べると風邪をひかないというのも風説ではないような気がしてきました。これから気温が下がる時期、日本酒を飲んで柿を食べたりすると、抗菌効果が強すぎて若い人たちも近づかなくなるかもしれません。
