スモールトーク
梅雨明け前の研修会
例年通り健康診断を終えると各受診者に対し担当医から個別に説明があるのですが、先日、私の何人か前の順の人が医師の説明に腹を立て、机を叩いて立ち去る場面に出くわしました。別室のできごとで話の内容は分らないのですが、医師の受診者に対する態度に気に入らないところがあった様子でした。おそらく、一年に一度の大切な健康診断を受ける側からすると、医師は特別な存在であり、検査データは勿論のこと今後の健康管理に対応が必要であれば十分な説明があることを期待していたことと想います。医師の立場からしても、ひとり一人の受診者のデータを確実に読み取り、それぞれの生活態度を訊き出しながら適切な説明とアドバイスを心掛けているに違いありません。それでも、立ち位置の違いは大きく、期待に副わない事態は起こりうるのだろうと考えます。医療機関の難しさを感じる健康診断でした。こんなことを考えていた暫くあと、梅雨明けの遅い今年の7月半ばに、社会保険労務士会が主催する「医療機関の働き方改革の実務」と題された研修を受講してきました。医師と医療機関のというのは、他の事業と比べると特殊な立場にあることを実感する研修でした。医療機関は人手不足であり、雇用区分が多様化して、女性医師の割合が多くなり、勤務医の長時間労働は減らず、医師自らが経営者で労務管理に詳しい訳でなく、沢山の潜在的な課題を抱える業界ということです。人の生命身体の安全にかかわる医療機関に対して、労働基準法や安全衛生法などの法令だけを拠り所にして厚生労働省や労働局が指導し取締るだけでは問題解決に馴染まないと行政も考えていたようです。医療機関の勤務環境改善に向けて医政局から社労士会に協力要請もあり、各医療機関がPDCAサイクルを回して自主的に対応できるマネジメントシステムの確立を社労士会がサポートする体制を構築することになっています。私たち社会保険労務士として、人手不足への対応として人材採用の支援や離職の防止策の検討、勤務環境の改善という面から人事制度・人材育成システムの構築や就業規則の作成変更、その他に給与制度の構築や評価制度の整備そしてワークライフバランスへの取り組み支援や雇用関係助成金の受給手続きなど、担うべき課題が多くあることが分りました。また、これらの課題は医療業界のみならず、働き方改革の流れの中で考えると介護や保育その他の業界にも広く関連することであり、この研修会でこれまで私が気づかずにいた大きな宿題を見つけてしまったようです。
2019年8月10日