スモールトーク

熊も水浴び

 気温が上がり続けて蝉が鳴いているのに、夜になると雨が落ちて梅雨が明けず、いつの間にか学校の夏休みは二週目に入ってしまいました。雨と暑さで花壇の草は伸び放題に伸び生垣の木の枝は隙間なく繁ってしまい、お盆までに片付ける事が出来そうもないぐらいになっています。薩摩芋の苗を植え損ねたのと時々の雨のお陰で、今のところ親の家の背戸に植えた南瓜や茄子の水やりは楽をしていますが、草の伸び方が著しく、年を経る毎に草の種類と密度が増え続けて、水やりの序でに草をむしっていても追い付きそうにありません。年寄りはどのぐらいの時間を草むしりに費やしていたのか、自分の時間感覚では想像の限度を超えてしまいます。僅かの空き地に耕運機や草刈機でもないだろうと思いながら、眺めているうち日に日に草が繁ってきます。これに加えて自宅の玄関脇の小さな花壇も凄まじく、暑さに強く霜が降りる頃まで大丈夫と思っていたベゴニアが消え、花は弱まっても株が残っている筈のナデシコが枯れてしまい、グラジオラスの球根を植えただけで夏の花が他になく、この先、お盆を前に随分と寂しい花壇になりそうです。こんな中、お昼に気がついたらスマホにメールが入っていて、家の近くで熊の目撃情報があったとの連絡で、当面の外出は禁止自粛にするよりなく、その後の出没に注意して暮らすことになりました。実は、健康診断で運動不足を指摘され、週に何度かだけ帰宅後に町内を軽く歩いて一回りしていたのも直ちに中止です。晩ご飯を食べてから町内を歩いて気が付いたのですが、ここ何年かのうちに暗い道を歩いても、大通り沿いだと犬に吠えられることが全くなくなりました。犬より猫の人気が高いことは知っていても、小型犬の散歩が目立つことは知っていても、町内から夜の人影に吠える犬がいなくなるほどとは考えたことがありません。夜の散歩が静かになったのは、人間だけでなく、きっと熊にとっても気兼ねなく歩き回ることができる町内なのだと思いが及びました。小学生の目撃談ということながら、隣のムラから自分たちのムラに向かって走っていったというのは、やはりこの熊、犬がいないと察したところ只者ではないようです。そしてこの熊、これから先の消息が分かりません。大きな体で何日も潜み続けるほどの茂みもなく、カモシカのようにヤツデやアオキを好物にしていることもなく、涼を求めて用水を下り海岸まで辿り着くかと思科するところです。心配なのは山への帰り道で、手取川を静かに遡って誰にも迷惑かけることなく仲間のところに戻ってくれるかどうか、それまで私は夜間の外出が禁止です。