スモールトーク
生きるリスクと言われること

昔なら生きているだけでも運が良かったと言われる癌のような病気でも、医療技術と健康保険の充実により、退院して治療を続けながら生活できるレベルまで回復するようになっています。ただ、会社や同僚への遠慮と治療に専念する気持ちもあって早々に離職してしま人も多く、費用の嵩む長期の治療を続けながらハンディ付きの求職活動をしても就職は困難で、病気は克服できてもその先に「生きるリスク」が続くということです。そこで言われるのが“治療と職業生活の両立”ということで、「不治の病」の多くが「長く付き合う病気」に変化していることを理解したうえ、個々の就労のために就業上の措置を講じて治療に対する配慮を行うことを健康確保対策と位置付けて、この環境整備の取組がガイドラインとして厚生労働省から示されています。産業保健センターで促進委員をしている社会保険労務士の方の話によると、病気そのものや職場復帰について本人も会社も理解していなことから「退職」という選択に至ることが多く、まず両立支援についての周知と啓発が求められるようです。そして、実際に就労を考えるにあたって困るのは、先の見通しが分らないため労使共にどうしていいか分らないということ、従業員は病気再発の不安を抱え事業主は病者の就労に責任を感じるということだそうです。そのため、この取組について本人からの申出を前提に会社がフォローする仕組とし、個人情報保護を明確にして本人の仕事の情報を主治医に提供したうえ就業上で必要な措置等に関する意見をもらい、会社は産業医の意見も聞きながら復帰の可否を含めた就業上の措置を決定し実施することになります。このとき、会社として難しいのは、主治医が治療の対象となる患者としてしか本人を見ておらず、ほとんど病院よりほか職場を知るはずのない主治医に対して意見をもらうことができる程度に具体的な仕事の情報を提供するということがあります。まだ始まって間もない取組で、ワークライフバランスあるいは雇用のダイバシティということにもなりますが、従業員本人にとっては仕事の継続と収入の確保、会社事業主にとっては人材確保とモチベーション向上、医療機関にとっては治療の継続と支払能力の向上、そして社会的には就業により社会とつながり活躍する人が増えることに意義を見出されています。
2017年2月13日