スモールトーク

社労士50年の知恵を贈る

社会保険労務士制度創設50周年の式典を前に、私ども同業の大先輩である村井先生が亡くなりました。仕事のことはもちろんですが、人の世を生きていくうえでの知恵を戴くことの多い方でした。私にとってメンターとはこの方だったかと、亡くなられてからそんなことを想っています。社会保険労務士として事務所を設けて45年の間お一人で業務をこなしていたというだけでも真似のできないことですが、映画や音楽そして歴史に古典と実に博識で、様々な領域に関心を持って日ごろの思いを独特の語り口で文章をまとめ、毎月のように私の事務所まで届けて頂きました。“らむがき”と名付けて書き始めたのが60歳を過ぎてからだそうですが、それでも20年近くの長期に亘って事務所の運営にあたり社会保険労務士会の役務をこなしながら書き綴ってみえたことになります。もともとは会計事務所に勤務しながら行政書士資格や社会保険労務士資格を取得して開業されたことから企業のアウトラインをつかむことが得意で、労働社会保険の手続や給料計算だけでなく労働問題・労務管理に関して説得力のある的確なアドバイスのできるコンサルタントとしても信頼の厚い先生としての印象があります。私自身も資格を取得して開業する前までは会計事務所にお世話になっており、会計事務所に勤務しながら資格登録して社会保険労務士会に入会している時期が長かったため、その頃から何かとお声かけ頂くことが多く、開業にあたっても励ましの言葉はとても力強いものでした。私が開業してからもお世話になることが多く、大金が絡む話でご迷惑だったに違いありませんが、母親が土地の名義を巡って自宅からの立ち退きを求められた際にも快く相談に乗って頂いて、お陰でこの時は落ち着いた気持で普段の生活を心がけることができました。平成の年号が変わろうとしている今、私が資格登録したのはまだ昭和でしたので、私も社会保険労務士として30年の経歴を重ねたことになります。諸先輩から授かったご恩を後輩達に贈り、引き継ぐべき後輩を育てる時期に来ているのだと思うようになりました。

2018年10月6日