スモールトーク

福祉法人の立ち上げをめざして

会議中で電話を取れず、後で見ると登録のない番号からの着信履歴が残っていて、誰かスマホに切り替えたとき番号も変えてしまったのかと思い電話を入れてみました。平日の日中なので怪しい人とは思わなかったのですが、声を聞いても名前を訊いてもすぐには誰か判りませんでした。話してみると、前に勤めていた会社の取引先からテナントに派遣されていた人ということでようやく納得することができました。先方もそのつもりで「分かるかな」という感じで、その当時の同僚から連絡先を聞いて電話したということでした。お互いに仕事も変わり居場所も分からなかったのですが、今は障害者の福祉施設の立ち上げを考えているそうで、業務経験はあっても法人の設立や経営については何も分からず、その相談に乗ってほしいということでした。資金計画や融資についても不安を抱えていて各方面から支援が必要なことが伝わってきました。
 福祉施設の民営化やノーマライゼーションの流れのなかで、公的な施設では限定的な収入と高額な人件費のため財政的に負担が重くなっているようですが、先行した大規模な施設では補助金を利用して業務を拡大しているところもあります。利用者の立場からすると、身体障害者だけでなく知的障害者や精神障害者も含めてその個性にふさわしい生活を目指しながら、行政や施設の方針に振り回されているというのがそこで働く人の心情のようです。利用者の同意を取るといいながら、Noと言えないのでYesと言う障害者と現場で接して、彼らのために自分にできることが多くあると考えて決心したということです。ただ、福祉事業は経営の安定のためにも社会福祉法人の設立を必要とするところが多くあり、そのためには寄付を受けるという形での資金集めが必要になりますし、法人の役員として支援を引き受けてもらえるような人集めも必要になります。何千万円かの資金は制度的に借り入れできる見込みが立っているので、施設資産の確保と運転資金の出資を手配できれば施設利用者と運営スタッフを募集するという段取りです。相談された私の立場からすると、法人設立の熱い想いを折ることなく気持ちだけが先に行き過ぎないよう着実に足元を固めて前進をサポートすることが役割かと考えています。一方では、成り行きによっては計画の断念を提案するのももう一つの役割と思っています。

2014年4月30日