スモールトーク
細分化された大変動

道の脇や公園などに桜の木が増え、春になると桜の花を眺めることが多くなりました。何年も前に植えた苗木が大きく育ち、枝が拡がって花が咲き誇る季節です。早咲きの品種改良が進んだのか、年ごとに気候が温暖になっているのか、先駆けの梅の花が申し訳なく見えるほど、桜が開花する時期も早くなってきたようです。入学式が終わった頃にのんびりとお花見ができたのは随分と昔のことで、この頃は年度替わりのゴタゴタとした用事に追われているうちに花が散ってしまいます。この春も、働き方改革の流れに乗って幾つもの制度変更が予定されており、それに重ねて長期の視点からの制度変更も着実に進められています。目立つところでは、個別に育児休業の取得意向確認を事業主に義務付け有期雇用労働者の育児介護休業取得要件を緩和する改正育児介護休業法や、保有個人情報の範囲を拡大して不適正利用を禁止する改正個人情報保護法が施行され、更に相談窓口を設けるなど事業主にハラスメント防止措置を義務付けたパワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)が中小企業にも適用されるなど、日ごろの業務に大きくかかわる制度変更があります。加えて、改正道路交通法による運転者の酒気帯び確認記録や改正公益通報者保護法による通報体制整備など、企業規模によるとはいえ思わぬ方向からの対応も必要になっています。また、労働社会保険の領域では実務に直結した細かな変更が並んでいます。健康保険料率・介護保険料率は例年通り3月(4月支払分)から変更されていますし、在職老齢年金制度が見直されて特別支給の老齢厚生年金の受給者を対象とした支給停止基準額を28万円から47万円に引上げて、65歳以上の人と同じ条件に合わせ一本化されます。健保年金など社会保険の加入について、10月からは100人超企業にまで短時間労働者の適用が拡大され、令和6年10月には50人超の企業にまで拡大されます。雇用保険料率の引き上げは4月実施は事業主負担分のみとし10月から本人負担分の引き上げが行われます。その先ですが、来年2023年4月からは、中小企業に対して猶予されていた月60時間超の時間外労働の割増賃金率が25%から50%に引き上げられることが決まっています。まだ先のことと考えていたことが、実際にはすぐ先のことになってきました。小規模企業であっても置かれているビジネス環境はグローバルに全世界とつながり、社会制度の変化にシンクロするより選択肢がないような状況です。面倒な制度変更でもここまで来たら大きな流れに乗るよりなく、すでに道が決まってしまっていることと思い、梅の香が消え桜の花が散る頃までに少しは前が見えるようにしなくてはなりません。
2022年3月31日