スモールトーク
能登から出た宝物

このたびの能登地震で被災された皆さんに心よりお見舞い申し上げます。また、多くの方々から私どもにまでお気遣いやご心配いただき誠に有り難うございました。元旦の午後、年賀状を取りに事務所に出向いたところで地震に遭いました。大きく長く繰り返す揺れは震源から離れた土地でも逃げ場のない怖さを感じるものでした。事務所では棚から書類が飛び出すなど大変な事態でしたが人的な被害はなく、すべての職員は無事に出勤してもらっています。まずは事務所の状況をお知らせして安全のご報告とさせていただきます。
地震発生から一月近くが経って復旧作業が始まり、ボランティアの受け入れも始めたようです。私ども社会保険労務士として何ができるのか、既に社労士会の義援金の募集を終え、行政の特例措置など周知しながらその対応を支援していますが、この先も果たすべき役割は多いと考えています。直接的には、技能を生かした災害ボランティアとして自ら被災地に入ったり、その後方に回ったりしてボランティアの人たちにその力を十分に発揮してもらうことができます。要望が有れば被災地の社労士業務を代行することも可能です。労働社会保険行政の窓口業務も再開し始めて、復旧作業に関連する時間外労働や事業継続に備えた当面の休業措置或いは事業整理に向けた解雇予告、雇用調整助成金の特例適用や基本手当支給の特例措置または雇用保険の離職手続、従業員本人や被扶養者の健康保険証の再発行手続、場合によっては未払給与の計算、その他にも社労士がその業務に関連した領域で支援可能なことは少なくありません。ただ、制度面で対応の難しさを感じることも多くあります。雇用調整助成金は元々が経済情勢の変動を前提にした製造業の雇用維持を意図する構造を基盤にしていて、コロナの雇用対策を担った時期を経て対応し易くなっているものの、小規模事業者にとって少し無理を求められるところが有ります。ただ、1年のクーリング期間が取り払われたことで、かなり雇用調整助成金の使い勝手がよくなった印象があります。また、失業給付の基本手当が特例として在職中に受給できることは便利とはいえ、離職した際の受給権が不安定になることを考えると被保険者への説明に不安と難しさが残ります。地域行政の担当者自身が避難所で暮らしていたり、家族が遠く二次避難所に移ったり、負担が重くなっていることも伝わってきています。事業所が被災し、事業主が被災し、従業員も被災し、この先も事業として継続する途を見出すことの困難さは解消していません。仕事がないと人は暮らせませんし、人のいないところで事業は成り立ちません。人が暮らすには住む家も必要です。高齢者が多い地域で仕事のために家族がバラバラの家に住むことが好ましいとは思えません。地域の力をそのまま再生できれば無駄がないと思います。廃校になった、珠洲実業、輪島実業、町野高校、柳田農業、小木水産、他にも、飯田、宇出津、輪島、門前、志賀、富来、穴水、中島、七尾、羽咋、どこの学校でも地元就職を希望する生徒が多いといわれ、その地元とは市内でなく石川県内のことでした。事実、これまで、輪島や珠洲からは多くの人材が石川県に限らず広く各地に出ています。能登の宝とも思える彼らの力も借りながら彼らの縁を生かして能登を何とかできないかと想うところです。