スモールトーク

避暑地の小女子

 仕事に出るのに少し大回りして美川漁港に近くを通ると、道沿いに「美川シラス」の幟が立っていました。シラスの文字を見ながら思い浮かべているのはコウナゴで、もしかしたらスベリを湯に通すのかとも考えましたがそうではなく、ここ何年か、初夏になるとここでシラスの漁をして販売を始めたようです。シラスがジャコになりコウナゴからカマスになるのかと、とんでもない思い違いをしていた私も最近ようやく全てが別物であると分り、シラスはイワシの稚魚で、ジャコは雑魚の稚魚、コウナゴはイカナゴの稚魚、カマスはちゃんとしたカマスと理解しました。厄介なのは、地域によりコウナゴは呼び名が異なり、瀬戸内では稚魚はシンコとかイカナゴ(玉筋魚)とかで成魚をカマスゴとも呼ぶようです。ネットで見たら、カマスゴはカマスの稚魚ではなくイカナゴの稚魚で成魚はフルセとも呼ぶと記されています。さらに、コウナゴと呼ぶのは関東の呼び名でイカナゴが成魚で小女子が稚魚、東北や北海道に行くと成魚はメロウドとかオオナゴとかになるそうで、関西に近い越前や南加賀で関東の呼び名が通っているのが不思議です。いま急に呼び名を変えた訳でもなく、蓮如上人が北潟に投げ入れた紙こよりからコウナゴを生じたという吉崎の七不思議でも「小女子」と伝わっているようです。このコウナゴというのは砂地の海底に潜って夏を過ごすとか、今年は吉崎に近くまだ防砂林も残る塩屋の港に揚がった小女子を食べることができました。水温の高い瀬戸内では春にイカナゴの釘煮ということになるようですが、こちらでは風も温まる5月頃が時期で醤油とちょっと高級な日本酒で火を通して汁を残しています。僅かの量でもご飯は食べ過ぎお酒は飲み過ぎ、連休の時期に家で初夏の時間を過ごすには気軽な楽しみの一つです。折角なので美川シラス、湯で洗って酢でしょうか、酒の好きな父がハマボウフを摘んでいたことを思いながら、父親の祥月に気がつきました。

2017年6月8日