スモールトーク

なぜ植物図鑑50年に和ハーブなのか

 植物図鑑と言うと中平卓馬をまず初めに想い浮かべます。この事務所報の表紙写真を依頼している武内正樹が惚れ込んだ写真家の代表作です。ついでに、急性アルコール中毒による記憶喪失、所在不明のジャズシンガー安田南のうわ言、写真以外のことが記憶に留まっている写真家です。この「なぜ植物図鑑か」も写真集でなく評論とされるもので、だから私の本棚にも並ぶサイズになっています。牧野植物図鑑に悪ノリしたわけでなく、中平植物図鑑から50年を経て回顧展が企画される時代になってしまいました。「なぜ植物図鑑か」を本棚から引っ張り出す気力は薄れ、私の植物図鑑は花づくり野菜づくりの作業マニュアルで、和ハーブや和紅茶と言われて未知の領域に引きずり込まれそうな所にいます。和ハーブと言うのはヨモギやドクダミなど私達の足もとに生えている植物で、医者に掛かることの出来なかった時代から薬効が認識されていたものを言うそうで、トリカブトなどの毒もまた認識され利用されていたということです。子供の頃を思えば、年老いた祖母はガマの穂を常備して怪我の手当てをしてくれたり、ヘビの抜け殻を熱冷ましにしたり、チドメで出血を押さえたり、救急とも漢方とも違うまじないの様なことをしてくれました。母は母で、ヨモギやドクダミにクコやらササやら何やら有り難みのない煎じ薬の様なものを飲ませてくれた覚えがあります。面白いのは父親で、普段は料理しないのに、たまに刺身など作ったりすると浜か何処かから気に入ったものを採ってきて、それで一人して飲むのです。これは究明すべきと考えて、至った先が和ハーブという領域です。和ハーブを自分の足元の植物として一括りにすると、本州では修験道に由来する伝統があり、北方ではアイヌ文化に由来する流れがあり、南方では沖縄文化に由来する流れがあるそうです。南方では高地に自生するのが北方では海岸に自生するなど、気候が違うので植生が異なり、その利用方法に違いがあり毒性植物も異なるため注意が必要ということです。和ハーブという括りは古くからの伝承が途絶えると新鮮味があります。一方では何代も住み続けている地域から発見もあることと思います。私には父親が酒に合わせていたのが何か突き止めたい気持ちが有ります。まず挙がったのがハマウド、今も人気のあるのがハマボウフ、想定外だったのがハマゴウでした。ハマウドの名の植物が見当たらず、少し似たものを調べてみるとどうやらセンダンの幼木らしく、放置するととんでもない大木になるので伐採した方がよさそうです。ハマボウフは料理屋さんでも湯通しで出てきて酢で食べるといいようです。ハマゴウは香りがいいとうところまで分かったのですが食べ方はよく分かりません。分からないときは天ぷらが無難な食べ方と考えておけば間違いないようです。調理の腕を磨くことも考えねばなりません。話が戻りますが、植物図鑑の中平卓馬、モノクロたて置きの写真が多いそうで、武内正樹もその傾向が強く、近いうちに表紙レイアウトの変更を考えています。ご期待ください。